FC2ブログ

空と星と私達

≫星に願いを みっつめ(QMA・ユリマラ)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

星に願いを みっつめ (1/3)

今年もまた七夕を迎えようとしている。学園の中庭、一番目立つ場所にそびえ立っている笹の葉を見上げながらユリは短冊を握り締めていた。
もちろん、今日が七夕という以外に何の日であったかは覚えている。しかし、当事者であるマラリヤは学園にはおらず、どこか空虚にも似た日々を過ごしていた。

『もう一度マラリヤに会いたい』

マラリヤを始め、学園の一部の生徒が一斉にいなくなってしまった日のことをユリは今でも覚えている。その日は学園中で大騒ぎになっており、ユリもまた大騒ぎしていた人間のうちの一人だ。
職員室まで乗り込んで、エリーザやマロンに激しく問い詰めたのは今でも語り草になっている。あの時、一人の生徒が止めに入らなければ、問題行動として処分されていたかもしれない。それくらいユリの悲しみは深く激しく、時間が経った今でもそのことが頭にこびりついていた。

「ユリさん…」

ふとそのことを思い出しながら、笹の葉の前でたそがれているとユリに話しかける生徒がいる。
シャロンだ。あの時にユリを止めてくれたのは彼女のことで、今でも彼女には感謝している。彼女もまたユリと同じように抗議したかった人物であろう。しかし、己を殺してでも全力でユリを止めに入ったことにユリは頭の下がる思いだ。

「…シャロン」

ユリは顔を横に向けてシャロンへと視線を送る。シャロンはというと憂いの表情を浮かべながら笹の葉を見上げていた。その姿は先ほどの自分と重なるようで、まるで鏡を見ているような錯覚に陥り、ユリは苦笑い混じりに唇を歪めていた。

「あれからもうずいぶん経ちましたわね」
「うん、そうだね」

二人とも乾いた笑いを浮かべて、お互いに視線を交わしていく。そう、あれからずいぶんと経ったはずなのに、二人の心は霧がかかったようにもやもやとしていた。
声が聞きたい。お互いに見つめ合いたい。指と指で触れ合いたい。お互いの体温を感じ取りたい。
日を重ねていくごとに想いは強くなっていく。そんな満たされない日々を誤魔化すために二人は忙しい毎日を送っていた。

「ユリさんは大丈夫ですの?」
「うん、なんとかね。シャロンは?」
「私は大丈夫ですわ。ご心配には及びません」

そうは言うものの、二人の表情から浮かび上がっている憔悴感がただのやせ我慢であることを物語っている。おそらく、ここに来た理由は二人とも同じだ。
会いたい人がいる。そのためだったら何にでもいいからすがりたいというのは仕方のないことだろう。

「結局、みんながどうなったのか教えてくれなかったね」
「そうですわね。何度聞いても『秘密裏のことです。さっさと教室に戻りなさい』の一点張りでしたものね」

エリーザの口調を真似ながら、ようやくシャロンの声色に活気が僅かながら湧いてくる。ユリもまた少し肩を震わせながら笑うのをこらえていた。
実際、何度聞いてもこのように取り付く島もなく追い返されるばかりだ。ただ、安否が気掛かりな中で、エリーザが安心させるように『みなさん少し出掛けているだけですので、安心して授業に戻りなさい。帰ってきた時に今までの授業を教えることができませんよ』と言っていたのはとても印象的に残っている。
スポンサーサイト

星に願いを みっつめ (2/3)

少し元気が出てきたところでシャロンと別れて、ユリは学園が見渡せる丘の上に一人立ち尽くしていた。
この場所から見える景色は相変わらず壮大である。とはいえ、その景色は少しずつ変わっていっているのかもしれない。

「わたしも変わっていかないとダメなのかな…?」

マラリヤがいなくなってからずいぶんと経ったが、未だにユリはそのことを吹っ切れずにいた。
時間が自分の傷を癒してくれるという言葉があったがそれは嘘だと思う。もしそうならユリはマラリヤのことを考える度にもやもやとするはずはないし、日に日に増していくこの感情は説明できない。
そんなことを考えつつ、ユリは盛大にため息を吐いていく。

「マラリヤってば、何の言葉も無しにいなくなっちゃうんだもんね…」

マラリヤが急にいなくなったことはユリにとって大きな衝撃を与えていた。ただ別れを告げられたのならそれでいい。
何の言葉も無くいなくなってしまったことが、ユリの心をスッパリと切り裂いて無力感を生み出していた。
どうしていなくなったのかは分かるはずもないし、今さら知るよしもない。マラリヤ達に何かあったのか、それともマラリヤに嫌われてしまったのか。それを考えるのも今は虚しい。

「そういえば、おめでとうって言いそびれたんだよね」

去年のこの日にユリはこの場所でずっと待っていたことを思い出す。来るはずなんてない。そんなことは分かっていたはずだが、それでもこの場所から動けずにいたことを苦笑い混じりに思い出していた。

「今年も言えずじまいかあ…」

ふと出てきた言葉が自分の胸の内で反芻されて、ユリは目尻に涙を浮かべてしまう。涙を拭ってただひたすらに泣くのを堪えていた。
ここで泣いてしまえば二度とマラリヤに会えなくなってしまう。そんな気がして、ユリは落ち着くために大きく息を吸い込んだ。

「ここでぐだぐだしててもしょうがないよね」

ユリがそう呟いたと同時に立ち上がり、改めて学園を見下ろしていく。そろそろ太陽も沈み始めており、笹の葉が魔法の灯りで照らし出されている。
今日は七夕。願い事を笹の葉に下げることの他に、その日がどのような日であったかをユリは思い出していた。

「そうだ、マラリヤに会いに行こう」

どうしてこんな簡単なことに気付かなかったんだろう。待ち続けて会えないのなら、自ら会いに行けばいい。今日はそんな日のはずだ。
たとえ今日会えなくてもいい。いつかはマラリヤに絶対に会いに行く。ユリは頬をぴしゃりと叩いて自分に檄を飛ばす。

「マラリヤ、絶対、絶対に会いに行くからね!」

自分に何度も言い聞かせるように叫んで、ユリは自らの拳を握り締めた。決意を胸に秘めたなら、あとは動くだけだ。
それまで心に霧のようにもやもやと掛かっていたものが晴れたような気がして、すごく心が軽い。これならマラリヤも見つけられそうな気がする。
ユリは再び自分に檄を飛ばし、早速動こうとこの場所を後にしようと駆け出していた。その時だ。

「…頼もしいわね」

とても懐かしい声がした。

星に願いを みっつめ (3/3)

加速しようとしていた身体に一気にブレーキを掛けて、ユリは思わず辺りを振り返りながら見渡していた。

「今の声…」

忘れるはずもない。一番聞きたかった声だ。信じられないと思いつつも、ユリは声のした方をじっと目を凝らして見やる。
視線の先には声の主-マラリヤが穏やかな笑みと共に佇んでいた。夢か幻か、ユリはつい自分の頬をつねってしまう。

「…いきなりご挨拶ね。そんなに私がここにいるのはおかしいのかしら?」
「………マラリヤぁ!」

相変わらずの抑揚のない口調、少し毒の入った口振りに懐かしさが込み上げる。ユリは嬉しさやら何やらで身体を震わせると、そのまま勢いよくマラリヤに飛び付いていた。
ユリは腰に手を回し、マラリヤのお腹に顔を押し付けて力一杯に抱きつく。昔とあまり変わらず、全力で抱き付く姿にマラリヤは多少呆れていたが、いつまで経っても全くマラリヤから離れないことにようやく違和感を覚えた。よく見ればユリは身体を上下に揺らしながら咽ばせている。

「…泣いてるの?」
「だっで、だっで…」

言葉にもならず、未だに顔を押し付けているせいでマラリヤはユリの表情を読み取ることができない。とにかくユリを落ち着かせるために、マラリヤはユリの頭にそっと手を乗せると小さな子供をあやしていくみたいに撫でていく。
泣き止むまで何度も何度も優しく頭を撫でて、マラリヤは慈愛の笑みを浮かべていた。これほどまでにユリが自分を慕ってくれたことが伝わって、マラリヤは穏やかながら心臓の鼓動が自分の中で響いていくのを感じていた。
とくんとくんと高鳴って、それがとても心地よい。マラリヤはユリの手を掴むときゅっと握り締めていく。ようやく落ち着いてくれたのか、ユリは泣き止むとマラリヤと同じようにきゅっと握り返してくれた。
そして、積極的に指を絡めてくる姿がいじらしくて、マラリヤは満足そうに微笑んでいる。

「…落ち着いたかしら?」
「………まだ、もうちょっとこうしていたい」

まるで小さな子供のように唇を尖らせて、ユリはマラリヤの瞳を真っ直ぐに見つめていた。
少しワガママを言ってみたつもりだったけど、マラリヤはすんなりと受け入れる。それほどまでに二人が離れていた時は長く、それまでの淋しさを埋めていこうとお互いを求め合う。
久しぶりの温もりはお互いを繋ぎ止めておくには十分すぎるくらいであった。やがて、その時も終わりを告げて二人は身体を離していく。

「マラリヤ…、すごく…すごく逢いたかったよ」
「…そうね。私もよ」

お互い表情を紅潮させてじっくりと見つめ合う。ここまでくれば、もう言葉はいらないのかもしれない。まるで二人だけの世界であるように錯覚するほど、辺りは静けさを保っており、二人は再び身を寄せ合う。

「マラリヤあのね、いっぱいいっぱい話したいことがあったんだ」

マラリヤがいなかった間、話しておきたかったことが次々とユリの中で浮かんでくる。一日千秋の思いで待ち続けていた反動かもしれない。
そんなユリを微笑ましく眺めながら、マラリヤは静かに頷いていた。マラリヤもまた待ち続けた反動で聞いておきたいのだろう。

「でもその前に…」

ユリは一歩だけマラリヤから離れると、息を大きく吸い込んでくるりと振り返る。マラリヤはというと期待を込めて静かに笑っていた。
そして、ユリはとびきりの笑顔で叫んでいく。

「マラリヤ、お誕生日おめでとう!」
「…ふふ、嬉しいわ」

一歩分の距離を一気に詰めて、二人は数えるのも忘れてしまうほどに手を重ねる。願い事が叶った喜び、お互いに触れ合うことのできる喜び、心が幸せで満ちていくという喜びが幾重にも積み重なって、二人は夜空の下で学園を見下ろしていた。



七夕。織姫と彦星が一年に一度だけ出会うことを許される日。さながらユリとマラリヤの二人は彼らを表すかの如く、待ちわびた日々を取り戻すように語り合う。
その充実した時間は過ぎていくのを忘れてしまうほど濃厚で、慌てて探しに来たシャロン達が現れるまで続いていた。









終わり

 | HOME | 

プロフィール

ねむひ

Author:ねむひ
百合スキーな社会人やってます。


最新記事


最新コメント


最新トラックバック


月別アーカイブ


お品書き

二次系文章 (77)
正しい勉強の仕方?(QMA・ユリマラ) (6)
魔法学園へようこそ!(QMA・ギャグ) (4)
ルキアサンタがやってくる(QMA・ルキマラ) (8)
まらりやせいちょうにっし(QMA・シャロマラ) (4)
星に願いを(QMA・ユリマラ) (2)
星に願いを ふたつめ(QMA・ユリマラ) (3)
星に願いを みっつめ(QMA・ユリマラ) (3)
高村姉妹の休日(スズナリ) (5)
歌えない歌姫と不思議な感情(ボーカロイド・ミク、マスター、メイコ) (8)
恋する歌姫とネギ色リップ(ボーカロイド・ネギトロ) (5)
愛しき歌姫に捧げるコイノウタ(ボーカロイド・ネギトロ) (8)
恋しき歌姫に送るあいのうた(ボーカロイド・メイマス)※R-15閲覧注意 (6)
生まれた日に刻む幸せの鼓動(ボーカロイド・extra、ネギトロ) (5)
バレンタインにまごころを(ボーカロイド・extra、ネギトロ) (4)
キツネビトにまつわるとても優しいお話(ボーカロイド・extra、ネギトロ) (6)
創作系文章 (8)
森と月と不思議な人達 (8)
捧げ文 (10)
VOCALOIDとお留守番(ボーカロイド・メイコ、ミク、マスター) (4)
VOCALOIDと思い出話(ボーカロイド・メイマス) (6)
小ネタ(VOCALOIDとマスターさん) (8)
小ネタ(VOCALOID・extra) (10)
小ネタ(QMA) (0)
小ネタ(NOIR) (0)
小ネタ(その他) (0)
頂き物 (3)
お知らせ (3)

検索フォーム


RSSリンクの表示


リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる


QRコード

QR

来訪者数


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。