FC2ブログ

空と星と私達

≫恋しき歌姫に送るあいのうた(ボーカロイド・メイマス)※R-15閲覧注意

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

恋しき歌姫に送るあいのうた (1/6)

※直接の性描写はありませんがR-15指定をさせていただきます。15歳未満、中学生以下の方は閲覧をご遠慮ください。



それはまだいづる家にミクやルカがやってくる前の話。
家賃の割には広めで部屋を持て余している貸家ではあったが、メイコと二人、いづるは充実した日々を送っていた。

「おはようございます、マスター」
「おはようメイコ」

朝の調理場にて、コトコトとコンロの鍋を煮詰めているところにメイコが姿を現してくる。
お気に入りのエプロン姿で出迎えて、いづるはコンロの火を止めてかつおぶしを放り込む。ふわっと舞っているかつおぶしを掬い上げて、いづるは満足そうに一息吐いていた。

「はい、マスター。お椀持ってきました。ご飯ついできますね」

メイコはそう言ってしゃもじ片手にご飯をよそい、テーブルへと運んでいく。
メイコと一緒に住むようになってから、少しずつ食事に力を入れるようになってきた。多分、一緒に食べる食事というのが楽しいというからかもしれない。

「いただきます」
「いただきます」

ご飯に味噌汁、きんぴらごぼうにだし巻き玉子と今日は和食といった様相だ。メイコは早速だし巻き玉子に箸をつけて、とても美味しそうに頬張っている。
こうやって見せるメイコの幸せそうに食べる姿は、いづるの頬も自然と緩めてしまう。
メイコに見とれつつも箸をとり、いづるは茶碗のご飯を丁寧に摘まんでいた。

「美味しいです」
「ありがと」

にこやかに談笑を交わしつつ、新婚生活のような初々しい朝食の風景はとても微笑ましい。
そんな楽しい時間もいつの間にか過ぎ去っており、空の食器だけがテーブルに残されていた。

「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした」

食後のお茶を啜りつつ、メイコはじっといづるの口元を見つめている。
その事を不思議に思ったのか、いづるは軽い気持ちで問いかけてみた。

「どうしたのメイコ?私の顔になんか付いてる?」
「いえ、その…、なんでもないです」

妙にしどろもどろとした態度に、いづる首を傾げて見つめ返す。なんとか誤魔化しつつあったが、いづるからの視線に耐えられず、メイコは白状するより他がないという状況であった。

「…その、マスターのほっぺたにご飯粒が付いてたらいいなって。そしたら、ご飯粒付いてますよって出来たかもしれなかったですね」

…可愛い。顔を真っ赤にしてまでそんなことを言ってくれるメイコが可愛くて、いづるは満面の笑みを浮かべていた。

「…笑わないでください」
「ごめんね。…そうね、メイコにほっぺた摘まんでもらえたら幸せすぎて死んでしまうかもしれないわね」

不機嫌になってしまったかと思えば、急に耳まで赤くしてうつ向いたりしたりして、メイコのことを愛しく感じてしまう。
クスッと微笑んで、いづるは片付けるために立ち上がる。後からメイコもついてきてくれて、二人並んで仲良く食器を洗っていた。
スポンサーサイト

恋しき歌姫に送るあいのうた (2/6)

「それじゃ出掛けてくるわね」
「マスター、いってらっしゃい」

メイコに見送られていづるは出掛けていく。さすがにいってらっしゃいのキスとかそういうのはまだないが、メイコの笑顔に見送られればそれだけで頑張れる。
車に乗り込み、お気に入りの楽曲を聞きながら仕事場へと向かっていた。いづるが働いているのは、いわゆる楽曲制作会社でCM曲からゲーム音楽、邦楽と様々なジャンル音楽を手がける会社である。

「おはよう」
「おはようございます」

仕事場に到着して、挨拶してきたのはいづるの上司であった。彼女は青野といって、なかなかの切れ者だと社内でも評判の人物だ。ただ彼女は気に入ったら弄りまくるという悪癖も持っている。
いづるも彼女に気に入られたのか度々からかわれていた。ただ、距離感を掴むのが上手く、ちゃんと気遣いが出来るのは救いではある。

「最近、やけに調子いいけど何かあったの?」
「別に何もないですよ。気のせいじゃないですか?」

一応、彼女はメイコの存在を知ってはいるが、詳しくは話していない。メイコと一緒に住んでいることがバレたらからかわれるのは目に見えているからだ。
とはいえ、それ以上は興味を持たなかったようで、すぐにその場を去っていく。とりあえず安堵のため息を吐いて、いづるは作業に取り掛かることにした。
この時は後々の出来事に気付くこともなく、割と平和な時間を過ごしていた。


それから数日後のこと、メイコは一人買い物に出掛けていた。今日はいづるが休みということもあり、せっかくだから腕を奮いたいと張り切っている。
近くのスーパーで買い物をして、上機嫌で鼻歌混じりに帰路についている。ここは電車もローカル線で一本が時間単位という田舎であるが、メイコはとても気に入っていた。
ゆったりとした時間、広々とした光景、温かい雰囲気。ボーカロイドという概念があるのかないのか分からないが、当たり前のように接してくれる街の人達はとても心地よい。

「ちょっと、そこのお嬢ちゃん!」

そんなのんびりとした時間を過ごしていたところ、どこからともなく声を掛けられてきた。
まずは他に誰かいないが辺りを見回すが人は疎らでどうやら自分のことを呼んでいるらしい。

「そう!今キョロキョロしているお嬢ちゃん!ちょっと道を教えてもらうと助かるんだけど!」

振り返ればライダースーツを身に纏い、大型バイクを押しながら女性が手を振っている。
ヘルメットやゴーグル等で姿や年齢は分からないが、竹を割ったような印象であった。



「いやー、助かったわ。この辺詳しくないから迷っちゃって。これでなんとかなりそうだわ」

話を聞けば休日はバイクに跨がって、いろいろな風景を眺めるのが趣味らしい。なんでも曲作りのイメージを浮かびやすいとか。
ちなみにヘルメットとゴーグルを外した彼女はメイコも見とれてしまう程の美人である。

「曲作ってるんですか?」
「ええ、そうよ。そういう貴女はボーカロイド?」
「…はい。よく分かりましたね」
「そりゃ音楽をお仕事にしてますから。ついでに部下にもボーカロイドのマスターをしてるってのがいるからね」

ぱっと見では区別もつかないであろう彼女を一目で見抜いたことにも驚いたが、ボーカロイドが結構身近な存在になりつつあるのも衝撃だった。
メイコにとって少し嬉しい話である。

「そうだ。お礼したいから送らせてよ。家は近いの?」

そう言ってどこからか取り出したヘルメットを投げて寄越して、彼女は決定事項のようにエンジンをかけていた。

「いえ、わたしは大丈夫ですから」
「いいからいいから。そのマスターにも興味あるし」

一度は断ろうとしたものの、一方的に押し切られてしまい、仕方なくメイコはヘルメットを被り彼女の腰に手を回す。

「わがまま聞いてくれてありがとうね。それじゃしっかり捕まってなさい!」

そう言い切る前にはアクセルを吹かして、彼女はバイクを走らせる。メイコは振り落とされないようにしっかりと捕まっていた。

「そういえば自己紹介がまだだったわね。私は青野っていうの!」

向かい風が吹き荒れた中で彼女はそう名乗る。必死で捕まっているメイコには名前を聞き取れるのがやっとであった。

恋しき歌姫に送るあいのうた (3/6)

「マスター、ただいま帰りました」
「おかえりメイコ。…そちらの方は?」

メイコが帰ってきたと同時にいづるが出迎えてくれる。この時、メイコが連れてきた人物が気になって、思わず問いただしていた。
青野はヘルメットにゴーグルとつけていたので風貌は分からない。

「ああ、メイコちゃんのマスターって貴女だったのね。偶然って怖いわ」
「ぶ、部長!?」

しかし、ヘルメットとゴーグルを外した途端、いづるの表情が一気に青ざめていく。
蛇に睨まれた蛙よろしく、いづるは青野の姿を確認するや否や彫像みたいに固まってしまった。

「マスターの会社の上司さんだったんですか?」
「そうなのよ。この子が頑張ってくれるからいつも助かってるわ」

二人が知り合いだとは露ほど思っていなかったらしく、メイコは慌てていづるの隣に回り込んでいく。そのまま客人を出迎えるように丁寧に頭を下げていく。

「知らなかったとはいえ、送ってもらってすみません。ぜひ上がっていってください」
「別に構わないわよ。メイコちゃんとデート出来たしそろそろ帰るわね」

丁寧にお辞儀をするメイコに青野はひらひらと手のひらを振って帰ろうと玄関に手を伸ばした。
しかし、そこに呼びかける声にに思わず手を止める。

「部長、せっかくですし上がってください。メイコのお礼もしたいですし」
「そう?悪いわね」

いづるに遠慮していた節でもあったのか、振り返ると機嫌よく玄関を上がってきた。

「メイコちゃん、手伝うわね」
「そんな、悪いです」
「いいのいいの、私はメイコちゃんを手伝いたいだけだから」

断る時間を与えることもなく、メイコの荷物を手にとって青野はリビングへと向かう。
いづるはどこか諦めた顔付きでメイコの肩をぽんと叩いていた。

「ああなった部長は誰にも止められないから。さすがに余計なことにまで口出しはしないから、さっさと終わらせた方が早いわよ」
「…そうみたいですね」

お互い苦笑いを浮かべて、青野の後を追いかける。
その後も冷蔵庫の片付けもてきぱきと進み、やっと彼女を客人として迎えることが出来た。
軽く話を弾ませたところでメイコがお茶を注いでいく。

「お茶をどうぞ」
「ありがとね。メイコちゃん。それにしてもこんな可愛い彼女と一緒に住んでるなんて知らなかったわ」

さりげなくすごいことを言われたような気がして、いづるは思わず咳き込んでしまう。
隣に座っているメイコがすかさずフォローに入ってくれたが、いきなりの先制攻撃に動揺を隠せない。

「私とメイコは別にそんなんじゃ…」
「そう?私とメイコちゃんがデートをしたと言ったら思いきり目が狼狽えていたようだけど」

相変わらず見ているところは見ている。感心すると同時にそんなに動揺していたかといづるはメイコを盗み見る。
メイコにとって満更でもないらしく、恥ずかしそうに視線を落としていた。

恋しき歌姫に送るあいのうた (4/6)

「あらあら、メイコちゃん可愛すぎるわよ?
こんなに可愛い彼女を持っているなんて幸せ者ね」
「だから、そんなわけじゃ…」

いくら否定しようとも、今にも湯気が噴き出してしまいそうなくらい顔を真っ赤にしていては説得力もないだろう。
しかし、それと同時に不安で胸を締め付けていく。人間とボーカロイド。寿命が圧倒的に違いすぎる。永遠なんて存在しないことを思い知らされるには十分過ぎる事実であった。
そのことをメイコも承知しているのか、二人して黙り込む。急に重くなってきた雰囲気ではあったが、目の前の上司はそれを許さないようだった。

「そうそう、メイコちゃん。貴女のマスターが曲を作ってきた時のことを知ってる?」

メイコにとって初耳らしく、はっとした表情で顔を上げていた。そのままふるふると首を横に振り、彼女が話し始めるのをじっと待つ。
その様子に満足したのか、彼女はゆっくりと口を開いていった。

「この子ね、仕事とか関係ない時間に相談と言ってデモテープとか持ってきたのよ。
まだまだ未熟だったけど、その時の表情がとても生き生きとしていてね。ああ、恋してるんだってすぐに分かったわ」

語っている彼女は実に楽しそうで、いづるもメイコも引き込まれてしまう。
メイコに至っては自分の知らないいづるが聞けると興味津々といったようだ。

「その時に聞こえてきたのがメイコちゃん、貴女の歌声よ。
貴女の曲が作られる度にどんどん歌声に艶が出てきてきたわ。きっとこの子のことを想って歌っていたんだなって。
だから二人とも、自信を持ちなさい。これだけお互いのこと考えているんだもの」

とても穏やかな笑顔で諭す彼女の前で、いづるとメイコは共に顔を見合わせる。
自分達の気付いてなかった感情を自覚させられて、思わず意識してしまい慌てて視線を外してしまった。
そんな二人を眩しそうに見つめながら、残りのお茶を飲み干してすくっと立ち上がる。

「それじゃそろそろお暇するわね。お茶美味しかったわよ、ありがとねメイコちゃん」

今度こそ手を振りながら玄関へと歩き出し、二人は慌てて追いかけると青野は帰り支度を始めていた。

「あの…部長、ありがとうございました」
「お礼はいいわよ。今度おのろけ話でも聞かせてちょうだい。それじゃメイコちゃん、またね」
「は、はい!また来てください!」

からからと笑いながら彼女は去っていく。その姿を見送りながら、なんだか嵐が通過していった気がして、二人は笑い合った。
もしかすると、この事を言いたいがためにわざわざ慣れない土地に足を運んだのかと邪推したりもしたが、本人が帰ってしまった以上、真意は分からない。
偶然の可能性も否定できないわけで、とにかく想像すればするほどあり得ない方向に傾いて、笑いを堪えきれずにいた。

「マスター、とても楽しい方でしたね」
「…そうね。少し疲れたけどね」

苦笑いを浮かべて二人見つめ合うと不意に彼女の言葉が蘇ってくる。彼女の言った通り、お互いに意識しているのかはまだ実感が湧かない。
けれども、なんとなくお互いの存在を確かめ合いたくて、そっと手を繋ぎ合わせていた。

恋しき歌姫に送るあいのうた (5/6)

その日の夜、いづるは一人考え込んでいた。もちろんメイコのことである。
上司に指摘されたこともあってか、メイコと過ごす未来の姿を想像していた。
一年後、五年後、十年後、そしてそれからの長きに渡る時間。人間とボーカロイドの共に生きることのできる時間は残酷である。おそらくメイコを残して先に逝くことになるだろう。
大きくため息を吐いて、いづるは椅子に凭れかかる。天井を見上げれて、どうすればいいのか思い悩んでいた。

『自信を持ちなさい。これだけお互いのことを考えてるんだもの』

確かにそうなのかもしれない。いづるはメイコに何が出来るんだろうと考える。メイコのこと想う度に様々な感情が溢れ出る。
この時、いづるの脳裏にある考えが浮かぶ。なんとなく思い付いたことではあったが、自然と身体が反応しており、作業用の画面を開いていた。



それから四、五日経ったことである。いづるは新曲の用意があるとメイコを呼び出して、曲の最終調整を行っていた。
珍しく緊張している。これからすることを考えれば無理もないかもしれない。
待つこと数分、丁寧なノックと共にメイコが姿を現してきた。そのまま適当に座ることを促して、ヘッドホンを渡していく。

「マスター、新曲もう聞いてもいいんですか?すごく楽しみにしていたんです」

ヘッドホンを受け取ったメイコはそれはもう楽しそうで、待ち遠しくて仕方ないようだ。
そのせいか、いづるの心音が加速していっていることに気付く様子は見られない。

「ええ、構わないわよ」

そう言って、いづるは出来たばかりの曲を再生させて、メイコの反応を伺うことにした。
デモを聞きながら、メイコは曲のイメージを膨らませていく。始めは鼻歌を鳴らしながら気楽に聞いていたが、途中から動きが止まり、一転して真面目なものとなる。

「マスター、これって…」
「お願い、最後まで聞いて」

メイコの瞳が揺らいでいるのを安心させるように微笑んで、いづるは必死に懇願していた。いつになく余裕のない様子にメイコは黙って頷く。
今聞いている曲の歌詞はとあるアンドロイドとそのマスターの恋物語を描いていた。
明らかに自分達を意識しており、曲の流れでマスターは添い遂げる覚悟を決意する。そのまま死を分かつまで共に過ごす未来を望むことを物語っていた。
メイコはこの曲を作った意味を理解する。そしてこの歌を歌う意味も。

「マスター、この曲だけは歌えません」

今にも泣きそうな表情で、メイコは思い切り首を横に振る。
愛する人のために歌う。これほど幸せなことはないだろう。しかし、この歌を歌うことは残酷な未来を意味している。
メイコはいづるを失ってしまうのが怖かった。たとえどんなに結びつきが強かろうと、時の流れに逆らうことはできない。
目に涙を浮かべていづるのことを否定する。いづるの告白はものすごく嬉しかった。
しかし、いづるを受け入れても、いづるをいつ失うか分からない恐怖がメイコを支配する。
後はただ泣きじゃくるしか出来なかった。駄々をこねる子供と同じなのは分かっている。いづるを受け入れて、失うことでより一層の衝撃を受けるくらいなら臆病者でも構わないとさえ思っていた。
いづるとメイコの間に明確な壁が生まれる。
しかし、いづるが選んだのは簡単な答えであった。メイコの隣に腰を下ろしてそっと優しく抱き締める。勇気を持って一歩を踏み出し、目の前の壁を取り払っていた。

「お願い、歌って?」

メイコの耳元で優しい声音で囁いて、いづるも嗚咽混じりに泣き声を上げる。いづるがガタガタと身体を震わせていることに気が付いて、メイコははっと顔を上げていた。まだ瞳を真っ赤に腫らしているものの、すでに泣き止んでいる。
身体を通していづるの怖さが伝わってきた。何も怖いのはメイコだけではないのだ。

「私がメイコの中で一生生きていけるような曲を作ってみせる。だから歌って?
私とメイコの想いが一つになれる曲が作れるように頑張るから」

自分の精一杯の想いを伝えて、再びいづるは泣き出していた。この時、メイコの中で何かが吹っ切れたような音がする。
気が付けばいづるの耳元で聞かされたばかりの曲を口ずさんでいた。

「…メイコ」

いづるはメイコと同じように真っ赤な瞳で見つめていく。いづるの部屋でメイコの歌声が響き渡る。
ボーカロイドの本能で歌う愛の歌。告白にも似たそれはいづるの心を解きほぐしていく。
歌い終えたその時、メイコの表情に自信による力強さが溢れていた。

「マスター、わたしの中で生き続けるような素敵な歌、絶対作ってくださいね?」

目に涙を浮かべたままの満面の笑みでメイコはいづるの腰に手を回してきゅっと抱き締める。
いづるも負けじと抱き返して、穏やかに笑っていた。お互い重なった胸の内から心地よい心音が聞こえてくる。
しばらくお互いの温もりを確かめ合い、何か込み上げてきたのか肩を震わせて笑い出す。
いつしか身体を離して、熱い眼差しを送り合った後、二人は唇を重ね合わせていた。
いづるとメイコが初めて重ねた唇はとても柔らかく、離した後も余韻が残っている。

「ねえメイコ、私の全てを貴女に刻ませて?」
「はい、マスターもわたしの全てを刻ませてください」

お互いクスッと微笑んで、再度唇を重ねていく。後は小さな衣擦れの音が部屋に響いていた。

恋しき歌姫に送るあいのうた (6/6)

そして迎えた次の朝、いづるはゆっくりと起き上がる。隣ではメイコが気持ち良さそうに寝息を立てていた。もちろん、二人とも生まれたままの姿である。
とりあえず胸元をシーツで隠し、未だ眠っているメイコの頭を優しく撫でていく。昨夜はお互いを求め合ったことを思い出し、顔を赤くして俯いてしまう。

「…恥ずかしい」

そう呟いて、いづるはメイコの首筋に視線を落とす。メイコの首筋にはいづるとメイコが愛し合った痕が浮かび上がっていた。
いづるからは見えないが、いづるの首筋にも同じものが浮かんでいることだろう。お互いを捧げるという意味で付けた痕だ。
その時のやり取りが脳裏に蘇ってきて、いづるは苦笑いを浮かべていた。

「マスターにも同じものを付けさせてください。…だってね」

まだメイコは穏やかに眠っている。起こすのも悪いし、もう少し寝ていたい。いづるはもう一度シーツにくるまってメイコと向き合う形で横たわっていく。
しかし、それがメイコを刺激したのか、メイコはゆっくりと瞼を開いてきた。

「…おはようございます、マスター」
「おはようメイコ」

二人はじっと見つめ合っていたが、やがて耐えきれずに吹き出してしまう。

「何がおかしいんですか」
「メイコこそ、何がおかしいのよ」

そう言って笑いながら、二人は指を絡めて手を繋いでいた。
熱い視線で感情が昂っていくのを自覚している。ほんのりと聞こえてくる心音が気持ち良い。

「ありがとねメイコ。昨日は歌ってくれて」
「いえ、マスターこそ曲を作ってくれてありがとうございます」

お互いを受け入れたせいか、なんとなく心が軽く晴れやかものになっている。
なんだか不思議な感じがして、いづるはコツンと額をメイコのそれにぶつけていた。あと少しで届きそうな視線がお互いの頬を緩める。
まだこうして横たわっていたかったが、目が冴えてしまったのか二人とも身を起こしていた。
不思議とお互い胸元を隠してしまい、二人は思わず赤面していた。

「メイコ、私は何時だってメイコと一緒にいれるような曲を作ってみせるからね」
「…はい、楽しみにしてますから」

ひとしきり笑い合ったところで衣服を身に纏い、大きく伸びをして、ベッドから降りようと足を運んでいく。お互い背中合わせになったところで、いづるはふと声を上げていた。

「…あ」
「マスター、どうしたんですか?」

いづるの様子気になったのか、メイコが振り返ってくる。いづるはそれに合わせてもう一度唇を重ねていった。
メイコの瞳が思わず見開いたのに満足して、いづるはゆっくりと唇を離していく。

「これからよろしくのキス。愛してるわメイコ」
「わたしだってマスターのこと、愛してます」

不意打ちが不満だったのか、メイコは唇を尖らせてそっぽを向いてしまった。

「次はわたしの番ですからね!」

とはいえ、メイコは怒っているわけではなく、次の機会を狙っているようだ。
人間とボーカロイドがどこまで繋がっていられるかは分からない。しかし、それでも共に生きていこうと胸に期待を抱いて、二人は一日の始まりを迎えていた。









終わり

 | HOME | 

プロフィール

ねむひ

Author:ねむひ
百合スキーな社会人やってます。


最新記事


最新コメント


最新トラックバック


月別アーカイブ


お品書き

二次系文章 (77)
正しい勉強の仕方?(QMA・ユリマラ) (6)
魔法学園へようこそ!(QMA・ギャグ) (4)
ルキアサンタがやってくる(QMA・ルキマラ) (8)
まらりやせいちょうにっし(QMA・シャロマラ) (4)
星に願いを(QMA・ユリマラ) (2)
星に願いを ふたつめ(QMA・ユリマラ) (3)
星に願いを みっつめ(QMA・ユリマラ) (3)
高村姉妹の休日(スズナリ) (5)
歌えない歌姫と不思議な感情(ボーカロイド・ミク、マスター、メイコ) (8)
恋する歌姫とネギ色リップ(ボーカロイド・ネギトロ) (5)
愛しき歌姫に捧げるコイノウタ(ボーカロイド・ネギトロ) (8)
恋しき歌姫に送るあいのうた(ボーカロイド・メイマス)※R-15閲覧注意 (6)
生まれた日に刻む幸せの鼓動(ボーカロイド・extra、ネギトロ) (5)
バレンタインにまごころを(ボーカロイド・extra、ネギトロ) (4)
キツネビトにまつわるとても優しいお話(ボーカロイド・extra、ネギトロ) (6)
創作系文章 (8)
森と月と不思議な人達 (8)
捧げ文 (10)
VOCALOIDとお留守番(ボーカロイド・メイコ、ミク、マスター) (4)
VOCALOIDと思い出話(ボーカロイド・メイマス) (6)
小ネタ(VOCALOIDとマスターさん) (8)
小ネタ(VOCALOID・extra) (10)
小ネタ(QMA) (0)
小ネタ(NOIR) (0)
小ネタ(その他) (0)
頂き物 (3)
お知らせ (3)

検索フォーム


RSSリンクの表示


リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる


QRコード

QR

来訪者数


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。