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空と星と私達

≫2012年12月

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小ネタ(VOCALOID・extra・クリスマスに幸福を届ける不思議なピアノ・ネギトロ)

巡音ルカは内心とても焦っていた。
12月24日、時間はもう23時を過ぎている。暗い夜道の中をカツカツとしたヒールの音が辺りに甲高く響き渡っていた。
一歩一歩が速い間隔なのは慌てていることに他ならない。
もちろん今日がこんなことになるという予定ではなかった。ミクと二人でささやかにクリスマスを祝おうということになっている。
多分、家ではミクがルカの帰りを待っているはずだ。この日のためにとお互いに予定を開けていたというのに、運命の神様があざ笑うような仕打ちに泣いてしまいそうだ。
一言でいえば運が悪かった。ある仕事が予定を大幅に遅れてしまったために今の今までずっと仕事に追われていた。
当然ながらルカに落ち度があるというわけでもないのだが、ルカは自分自身を責めてしまう。申し訳ないという気持ちで心が締め付けられたようでとても息苦しい。
急ぎ足で帰路に着く中、ルカの手には手荷物が一つ。この日のためにと用意したクリスマスケーキだ。
ミクと二人で街の中を歩いていた時に偶然見つけ、一目惚れだったか勢いで予約してしまった。
ピアノの形をしたクリスマスケーキ。ミクと一緒にかわいいかわいいと騒いで微笑み合っていたのが脳裏を過ぎる。

「ミク…」

その時のミクの笑顔が何度もよみがえってきては霧のように消え去っていく。
泣いているのか、怒っているのか、そんなミクを考えるだけでも気が滅入ってしまいそうだ。
そんな時間も自分の住んでいる建物が見えてきたところで終わりを告げる。幾重にも時が重なって感じられてしまったのはミクの笑顔のためにと願っていた時間が打ち消されたことによる絶望への表れであろうか。
マンションの一室に明かりが灯っている。ルカとミクの住んでいるところだ。

「…起きてたんだ」

ルカは誰にも聞こえることなくひとりごちて、その一室をじっと見つめていた。
まだ起きているということはルカのことをじっと待っているのだろう。その事実に気づいた時にはルカは駆け出していた。
ミクに怒られるかもしれない。泣かれてしまうかもしれない。しかし、それ以上にミクを悲しませるのは何よりもルカ自身が許せない。

「ただいま!ミク、ごめん!」

勢いよく玄関を開けて、ミクがいると思しき部屋―リビングに半ば飛び込むような形で入り込むとソファーの真ん中に一人でミクはうなだれていた。
いつもよりも小さく、弱々しく見えてしまうのは気のせいではないはずだ。
とにかく、ミクに元気を出してもらうなら思い切り怒られようと、気の済むまで泣いて吐き出してもらおうとかまわないと、ルカはミクの前に立つ。

「ミク、ホントごめん。せっかく約束してたのにこんな形で破っちゃって」

ルカはひたすらに頭を下げるが、謝られた本人に反応はなく、ピクリとも動かない。
何かしら反応があると思っていただけに、ルカにとってとても堪えた。せめて何かしら罵倒されてた方がまだマシだ。
ショックでミクの膝の上に崩れ落ちて、思わず塞ぎ込んでしまう。

「ごめん、ごめんねミク」

その日、何度つぶやいたかわからない、愛しき人の名前を、ついには嗚咽混じりで声に出せば、不意に上の方から声がかかってきた。

「…ルカ?」

涙で顔をくしゃくしゃにしているにもかかわらず、ルカはハッと顔を上げる。涙で濡れた表情はみっともなかったかもしれないが、それでも愛しき人の声には反応せずにはいられなかった。

「…ミク!」

先ほどまでの悲しみを振り払うかのように、勢いよく顔を上げたルカの瞳に飛び込んできたのは、寝ぼけ眼を擦りつつ、大きく伸びをしているミクの姿であった。
どうやら今まで静かに眠っていたらしい。さっきまでの自分が見事な間での独り相撲ということに気が付いて、ルカは顔に血が昇っていったのを自覚していた。

「ルカ?顔がものすごく赤いよ?」
「…なんでもない。なんでもないから。それよりもミク、遅くなってごめん」
「え?」

上手く事態が呑み込めないらしく、ミクはきょとんとしている。とはいえ、時計に視線を伸ばしたところで慌てふためき立ち上がっていた。

「もうこんな時間!?」

ようやくルカが謝ってきたわけを理解して、ミクはふと視線を落とす。
そこには、罪悪感で今にも押し潰されそうなルカが目に涙を溜めていた。もしかしたら許してもらえるまで、ずっと謝り倒しかねない勢いだ。
と同時に、テーブルに置かれた包みに気が付く。形からして例のクリスマスケーキなのだろう。
そうなれば、ミクのやるべきことは一つだ。

「ルカ、顔を上げてよ。料理冷めちゃったけど、ルカがこんなんじゃ一緒に祝えないじゃないよ」
「…いいの、ミク?」
「いいもなにもルカは約束を覚えてくれたんでしょ?だったら今からでも遅くはないよ」

そう言って見せてくれたミクの笑顔はあの時と全く変わらない。
怒られたり、泣かれたりすることを覚悟していただけに、この笑顔はまさしく不意打ちであった。
そのまますがるように抱き着いて、ルカは顔を押し付ける。さっきまでの不安で押しつぶされそうなのと、今ルカの胸の内から溢れんばかりの喜びが入り混じった表情はなんとなくミクに見せたくはなかった。
普段はあまりルカに甘えてもらうこともないため、ミクはなんだか新鮮でこそばゆい気分だ。ルカが可愛くて仕方ない。

「ルカ、そろそろいい?」
「そうね、心配かけてごめん」

一瞬の間をおいて、「そしてありがとう」と消え入りそうな声がミクに届く。ミクにとってはまんざらでもなさそうで、終始ご機嫌で料理を次々と温めていた。
そして、遅ればせながらも美味しそうな料理がテーブルに並べられていく。
最後にピアノの形をしたクリスマスケーキを数々の料理の中心において、二人はソファーに身体を埋めていた。

「やっぱりすごくかわいい!なんか食べるのもったいないね!」
「そんなこと言っても、そんな顔じゃ説得力に欠けるわ」
「ルカってばひどい!」

確かに子供のように瞳を輝かせて、今にも齧り付きそうな表情をしてればルカの言葉も納得できるであろう。
不満そうにルカを睨み付けるミクにクスクスと微笑み、ルカはシャンメリーをそれぞれのグラスに注いでいく。

「しかし、こう夜遅くだとサンタクロースも悪い子扱いして、来てくれないかもしれないわね」
「あー、うん。でも、ルカと一緒にいられるならサンタさんには諦めてもらおう」
「えっ」

半ば冗談のつもりで言ってみたが、ミクの意外な返答にルカの鼓動が不意に高鳴る。
どういう意味なのだろうと聞いてみようと思えば、すでにミクがこちらに顔を近づけてきていた。
気が付いた時には唇と唇が軽く触れあい、ルカは目を丸くしてしまう。
事態を理解した瞬間、血が沸騰してしまいそうなくらい心臓がバクバク鳴り出してしまうのを自覚する。

「えへへ、メリークリスマス」

悪戯っ子のようなミクの笑顔は嬉しいやら恥ずかしいやら悔しいやらでとても複雑だ。
叫びたい気分ではあったが、そんなことをすればミクの思うつぼのような気がしてならない。

「ああ、もう、メリークリスマス」

赤ら顔でやけくそ気味に言い放って、ミクとルカはグラスを重ね合わせる。
甲高い小気味のいい音がリビングの響き渡り、二人のクリスマスを祝う合図となる。
その日にあったつらい出来事を忘れるくらい、楽しいおしゃべりの時間が始まっていた。
お互いの温もりが伝わる距離で二人寄り添って過ごすクリスマスは二人にとって安らぎの時間となり、自然と表情も緩くなっていく。

「そうだ、後でケーキ食べさせっこしようよ」
「そんなこと言って、私がずっとケーキを食べさせることになるんじゃないの?」
「そんなことないもん!わたしだってルカに食べさせてあげたいんだから!」
「こんな風に?」

言うやいなや、ルカはいつの間にかミクの唇を奪っていた。お返しといわんばかりにミクの柔らかい唇を堪能する。ちょうどよく反撃ができて、ルカはなんだかすっきりした気分だ。
一方で、まさか反撃を受けるとは思っていなかったらしく、ミクは耳まで顔を真っ赤にしていた。

「私を甘く見ているからよ」
「ルカのいじわる!」
「あら、この口が言っているのかしら?」

いつの間にやらじゃれ合いが始まり、リビングを和んだ空気が包む。
軽いケンカは二人にとって愛情の一種のようなものだ。数分程度ですぐに治まり、再びいつもの時間の流れに戻っていく。
そんなときに、ミクは先ほどのやり取りが気になっていた。当然ながら、意識するなという方が無理な話なのかもしれない。

「ところでルカ、ルカをあんなふうにしちゃってもいいの?」
「さあね、ミクの好きなようにすれば?」
「…やっぱりルカはいじわるだ」

拗ねたミクの表情で、急におかしさがこみ上げてきて、ルカの笑い声が部屋を覆い尽くしていた。つられてミクの笑い声も重なっていく。
結局のところ、騒ぎはまだまだ続くようだ。意識してないと言えばウソになるが、楽しみは最後まで取っておくのも悪くない。
二人の視線の先のピアノのクリスマスケーキは不思議と二人に幸せを届けているようだった。






ミクさんのピアノのクリスマスケーキで何か書いてみようと思っていたらこんなのが出来上がってました。
書いてる本人が何書いてるのか一番わかっていないという。
二人のこの後の出来事はご想像にお任せします。
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小ネタ(VOCALOIDとマスターさん)

「マスター、いい加減落ち着いてくださいよ」

メイコに注意されて、私は歩き回ることをピタリと止める。私は焦りからか、メイコをキッと睨み付けていた。

「だってミクが友達を連れてくるのよ。落ち着いてなんかいられないわ」

そう、昨日ミクが「友達を連れてきていいですか?」と言ってきて、それから朝早く出掛けてしまい、今までずっと待ちわびている状況である。

「だって、ミクに変な虫がついたらどうするのよ?
どこの馬の骨かわからない輩にミクがキズモノにされたらどうするのよ?」

私の恨めしい声にメイコは呆れた顔でため息をついてきた。ただでさえ気が立っているというのに、メイコの態度は私のイライラを加速させていく。

「大丈夫ですよ。大体どこの父親ですか、マスターは。それに、連れてくるのは女の子ですよ?」
「メイコが言っても説得力がない」

ついカッとなって反射的に出した私の反論に、メイコは押し黙ったまま動かない。少し言い過ぎただろうか?
私がおろおろとしているとメイコは目に涙を浮かべて睨み付けてくる。

「…だったら、わたしの時も心配してくれたっていいじゃないですか!」

ミクにばかり構ったことに思いっきりやきもちをやいて、メイコは泣きながら訴えてくる。そのままメイコは崩れ落ちてしまい、私は胸の奥がズキッと痛んだ。
…メイコに謝らないと。

「ゴメン、メイコ。その…、言い過ぎた」
「…ひっく。…だったら、行動で示してください」

未だにメイコは涙を溜めた瞳でこちらを睨んでいる。不覚にもすねている表情のメイコがとても可愛らしく思えた。
とはいえ、そんなことを思っている場合ではない。私は腰を下ろすと覗き込むように視線を合わせていく。

「わかったから、どうすればいいの?」

私の言葉にメイコがピタリと泣き止んだ。そして、メイコは弱々しい声ながらもしっかりと言葉を紡いでくる。

「…まずはギュッと抱きしめてください」
「こう?」

メイコの要求通り、私はメイコに近づくとふわっと優しく抱きしめた。メイコの柔らかい肌、しなやかな細い指、豊かな胸の感触が絡まり合っていく。
私とメイコの心臓の音が違わず重なり合って、頬が上気していくのを自覚していた。

「次に優しくキスをしてください」
「はいはい」

そっと目を閉じたメイコに私も目を閉じて、とても優しくメイコの唇に自分の唇を合わせる。
長い間、ずっと触れたままの唇をようやく離すと、メイコはなんとか機嫌を直してくれたようだった。
そして、メイコは顔を上げると最後の要求を口にする。

「…最後に、今夜ベッドでわたしの愛を受け止めてください」
「はいは……え?」

何とはなしに頷いていたら、凄いことを言われたような気がして胸の内で反芻していく。
ようやく気付いた時には遅く、私のしまったという顔にメイコは唇を吊り上げていた。

「約束ですからね!思いっきりマスターを愛しますから、覚悟してくださいね!」

さっきまでの表情とは裏腹に、メイコは勝ち誇った表情をしている。ここはどうやら諦めるしかないようだ。

「…手加減はしてよね」
「マスターが可愛い声を出してくれたら考えます」

悪戯っぽい笑みを浮かべるメイコに私はため息をつかずにはいられなかった。
…あの後、ミクが連れてきた友達が原因で大騒動になるのはまた別の話だが、今の私達は気付かない。ミクが帰ってくるまでの間、私達は寄り添ってお互いの温もりを確かめ合っていた。

そんな折、玄関の呼び出し音が鳴り響く。ようやく帰ってきたと私は客人を迎えようと立ち上がった。


「ただいま帰りました、マスター!」

どうやらミクが友達を連れてきたらしい。私は玄関に赴くとミクの姿が確認できた。そして、そのまま入るように促していく。

「連れてきて構わないわよ」

私が入るように促すと、緊張した面持ちで二人が玄関を開けて入ってきた。黄色い髪のミクより若干小さな女の子。

「は、はじめまして。鏡音リンっていいます。その…、センパイには良くしてもらっていて…」
「あれ?ひょっとしてリン?」

妙に緊張した声がどこかで聞いたような感じがしたので、よく見ると見知った顔だった。向こうも同様だったみたいで慌てて顔を上げてくる。

「…え?いづるさん?」
「マスター、お知り合いなんですか?」

ミクの疑問に私は大きくうなずいて、目の前のボーカロイドに軽く手を振った。
鏡音リン。詳しい説明は省くが、実家の妹と一緒に暮らしている。

「ええ、妹と一緒に住んでるボーカロイド。久しぶりね、リン。妹は…、うららは元気してる?」

とりあえず緊張が解けたらしく、リンは一息ついて胸を撫で下ろしている。やはり、知らない家に来るのは緊張していたらしい。そして、落ち着いたところで話を切り出してきた。

「はい!マスターは元気いっぱいですよ!それに、もうすぐ元気な姿が見えますよ」

………どういうことだろう?

「お・ね・え・ちゃーん!!」
「わわっ!」

疑問に思っていたのも束の間のことで、いつの間にか玄関から飛び込んできた人物にいきなり抱きつかれて、私はひどく驚いた。当然見知った顔である。

「う、うらら!急にどうしたのよ。それに、いつこの家に入ってきたわけ?」
「ゴメンお姉ちゃん。驚かそうと思って、リン達に内緒にしてもらっていたの。前にミクやメイコのことを聞いてたから、リンが友達になったって聞いた時にはびっくりしたよ」

そういえば、前に実家に帰った時にメイコやミクの話をしてたっけ…。リンが仲良くなったのを聞いて付いてきたのだろう。

「とにかく、お姉ちゃんに会えて嬉しいよう」

妹といきなりの再会で驚いたけど、やっぱり嬉しい。こうして妹に抱きつかれていると、メイコが私の腕を絡めてしがみついてきた。
やけに恨みがましい視線を妹に送っているのは気のせいだろうか?

「はじめまして、メイコです。わたしの大切なマスターがお世話になってます」

頬を膨らませて、メイコはギュッとより一層の力を込めて抱きついてきた。すると、妹もまた負けじと腕に力を込めてくる。

「はじめまして、うちの大事な大事なお姉ちゃんがお世話になってます」

なんとなく、妹とメイコの視線がぶつかって火花を散らしているのがはっきり見えた気がした。
このなんとも言えない空気にミクやリンは離れて遠くから見つめてきている。よく見ると、とても和やかな雰囲気で談笑していた。

「センパイ、いづるさんのとこっていつもこんなふうに賑やかなんですか?」
「はい!マスターはメイコさんやうららさんと仲良しさんでとてもうらやましいです」

…いや、違うから。お願いだから助けて…。

こんなことを思っても、二人の気迫に声を出すことができない。にこやかに談笑している二人に助けを求めることもできず、私は妹とメイコに挟まれながら夕食時になるまでまったく動けなかった。






マスターさんの名前はこの時に決めました。五弦→いづる、打楽器→打楽→うらら。その名前の通り弦楽器と打楽器を得意としています。

小ネタ(VOCALOIDとマスターさん)

「マスター、一緒にお酒でも飲みませんか?」

夕食も終わり、のんびりまったりしたところに、メイコがビールの入った袋をぶら下げて誘ってきた。

「別にいいけど、酔ったところで変なことをしようと考えてないでしょうね?」

私がこう言ったとたん、メイコは思いきり目を反らして慌てて言葉を紡ぐ。どうやら図星だったらしい。
未だに目が泳いでいるメイコを睨み付けると、メイコは慌てて口を開いてきた。

「そ、そんなんじゃありませんってば。
今日は十五夜ですから、一緒に月見酒でもどうかなと思いまして」

…そうか、今日は十五夜なんだ。
多少は変なことを考えてるみたいだけど、たまには一緒に月見酒というのも悪くないかもしれない。
そう考えて、私はメイコにある提案を一つ掲げることにした。

「いいわよ。ただし、ミクも一緒だけどね」

これでメイコも下手に動けないはず。案の定、メイコは狼狽えてしまい、口調がしどろもどろとなってしまった。

「ええと、その、マスターと二人きりで…、すいません、なんでもないです」

メイコには悪いけど、せっかくなので三人で楽しもうと私はミクの名前を呼んだ。
すぐに二つ返事で了解をもらい、私達は出かける準備をしていく。





それから数十分後、見晴らしがいいということで私達は近くの公園に足を運んでいた。

「マスター、見てください!お月様がとってもきれいですよ!」

初めての月見だったらしく、ミクが楽しそうにはしゃいでいる。
どうせならということで、近くの公園のベンチを陣取ってメイコと二人でビールの缶を開けて、ミクにはおはぎをあげている。

「…せっかく、マスターと二人きりになるチャンスだったのに」

メイコはというと、まだ相当根にもっているらしく、愚痴をこぼしている。一気にビールを飲み干し、赤ら顔で呟いていた。

「…いいですよ、どうせマスターはわたしのことを愛してないんですよ」

酔いが回るのが早いのか愚痴がどんどん悪化している。
…仕方ない。

「メイコ、酔ったでしょ?少し休んだら?」

ぽんと私のひざを叩いて、頭を持ってくるように促すと、メイコは目を輝かして私に甘えるように頭をひざに乗せてきた。

「マスターの膝枕、…気持ちいい、生きててよかったです」

…そんな大げさな。





そうこうしている内に月は高く昇って、夜も深くなろうとしている。
気がつけば、脳裏に浮かんだ歌を口ずさんでいた。

「マスター?」
「何ですか、この歌?」

二人とも静かに聞き耳を立てていたが、やがて気になったのかおそるおそる問いかけてくる。二人の問いに私は懐かしさを感じて答えていった。

「…昔、おばあちゃんに教えてもらった月の歌。…なんか急に、ね」

なんとなく感慨にふけていると、ひざの上にいるメイコが歌い始めた。つられてミクも歌いだしていく。

「メイコ…?」

客もなく、いきなり始まったライブに、私は戸惑いながらも静かに耳を傾けていた。
やがて歌も終わり、私はメイコをじっと眺めていく。当のメイコはというと、なにやら思案顔で呟いていた。
しかし、それもつかの間のことで私に向かって目で合図をすると、確信に満ちた表情で口を開いてきた。

「気に入りました、マスター。この歌をわたしにください。素敵なマスターとのラブソングにしますから」

そういえば、おじいちゃんがおばあちゃんのために作った月の歌だと聞いた記憶がある。私の顔がほてっていることが自覚できた。

「…その、メイコ、……ありがと」
「それにしても、メイコさんすごいです。よくラブソングだってわかりましたね」

目を丸くして驚いているミクにメイコは自信を持って胸を張っている。わたしもまたあの歌詞からよくラブソングだということ分かったと感心してメイコを見つめていた。

「マスターへの愛は誰にも、ミクにも負けませんから」

メイコの一言に胸がどきっとしてしまう。私はついメイコから目を背けてしまった。
メイコのマスターになれて本当に私は幸せだ。私はそう思いながら、照れ隠しのつもりで残っていたビールを一気に喉に流し込んでいった。






お月見の話ということ月見酒でいこうと思ってました。思ったよりもまともな話になってしまいましたが。

小ネタ(VOCALOIDとマスターさん)

「…ただいま」

突然の夕立にやられて、私はずぶ濡れになって玄関を開ける。

「おかえりなさい。わわっ、マスターずぶ濡れじゃないですか!」

私の姿に驚いたのか、出迎えにきてくれたミクが目を丸くしている。

「そうなのよ。いきなりで悪いけど、お風呂沸かしてくれる?」

私の言葉にあまり慌てる様子もなく、ミクは両手を合わせてうなずいた。

「ちょうどよかったです。お風呂さっき沸かしましたから、すぐに入れますよ」





「…ふぅ、生き返るわね」

私は浴槽で思いっきり背中を伸ばしていく。冷えきった身体が温まっていくのがとても心地よい。

「それにしても、えらく準備がよかったわね…?」

ふと疑問に思ったことを口にして、私は少し考える。
…考えている途中でなにやら騒がしい音が近づいてきた。

「マスター!!大丈夫ですか!?風邪引いてませんか?」

メイコがいきなり浴室に飛び込んできて、思わず私は湯船に身体を沈めてしまう。

「…びっくりしたじゃない、メイコ。
………って、どうして裸なのよ!?」

私の驚きをよそにメイコは目をぱちくりと瞬かせて、あっさりと答えてくる。

「どうしてって…、マスターと一緒にお風呂に入るためですけど?」
「……………」

私が呆けているうちに、ミクも浴室に入ってきた。

「あ、マスター。湯かげんはどうですか?」
「ちょうどいいわよ。…って、ミク?あんたもなの?」
「そうですよ?」

至極あっさりと答えてくるので、私はちょっとした疑問をぶつけていた。

「あんた達、定期メンテナンスで洗浄しているのにお風呂に入るわけ?」

すると、二人は何を言わんやという表情で次々と口を開いていく。

「当たり前じゃないですか、お風呂は女の子のたしなみですよ?」
「大体、メンテナンスは殺伐としすぎてお風呂に入った気がしないんですよね」

言ってることはものすごく分かるけど、ボーカロイドとしての発言じゃない気がする。
つまり、自分達が入るつもりでお風呂を沸かしていたというわけだ。
…でも、あまりの人間味あふれる行動になんだか嬉しくなって、思わず、私は頬を緩ませていた。

「ま、いいか。小さなことよね」

私はそうつぶやくと、改めて湯船に浸かってのんびりする。
メイコもミクも湯船に入ってきて、さすがに三人は狭いけど、私達はまったりとしていた。





~~~~~♪

なんとなく歌いたくなって口ずさんでいるとメイコやミクが反応して歌い始める。

~~♪~♪~~♪

三人の歌声が合わさって、浴室が大きなオルゴールのように音を奏でているみたいだ。
歌い終わったあと、ミクが思案顔でいきなりこんなことを言ってきた。


「マスター、なんだかお風呂の歌とか歌ってみたいです」

ミクが突然リクエストをしてきたことに驚いたけれど、私は少しイメージを組み込んでみてから口を開いた。

「面白そうね。わかったわ、書いてみる」
「マスター、あたしの分も書いてください」
「…はいはい、気合い入れて書いてみるわね。それじゃ、そろそろ上がろっか」

ミクとメイコにリクエストされたことが嬉しくて、私は作業部屋に向かう。
しかし、お風呂の歌ってどんなのだろう…?
それから、作業部屋でいろいろ考えてみたけど、結局仕上げるまでに時間がかかったことはまた別の話。






普通にお風呂のシーンを書いてますけど、文字だけだから年齢制限表記はなくて大丈夫ですよね?(震え声)

小ネタ(VOCALOIDとマスターさん)※R-15注意

「あら?ミク何読んでるの?」

めずらしくミクが本に夢中になっているので、私はつい気になって声をかけてしまった。

「あ、マスター。メイコさんが面白い本があるって渡してくれたんです」

…へぇ、メイコがミクに本を読ませるなんてついに姉としての自覚ができたということかしら?
思わず感心してミクを読んでいる本をのぞいてみる。

「どれどれ…。メイコがミク勧めた本は何かしら?」

ブックカバーがかかっていたのでどんな本かはわからなかったけどチラリと見えた画からマンガということはわかった。

「まあ、メイコらしいといえばらしいわね」

私の反応にミクは興奮した様子で振り返って反論してくる。

「でもマスター。結構参考になりますよ、この本」

ミクがここまで言ってきたことに驚いて、私はじっくり見てみようとミクの後ろから覗き込んでみた。








「あの…、マスター。どうしてあたしはこうぐるぐるとすまきにされてるんでしょうか?」

メイコが帰ってくるなりしばき倒して、私は身動きが取れないようにメイコをすまきにしていた。

「あ、ひょっとして新しいやつですか?
だったら、…その、優しくしてくださいね」
「メイコ」

変に顔を紅く染めたメイコを無視して、私はできるだけ冷ややかな声で遮った。

「これは何?」

私はミクから取り上げた本を差し出すと、メイコは目をぱちくりと瞬かせる。

「ワ○ルド○ーズじゃないですか。ミクと一緒にマスターを天国に連れていくために貸しましたけど、どうかしましたか?」

まったく悪びれた様子もなく、メイコはしれっと答えてくる。

「あのねえ!ミクにはまだ早すぎるでしょうが!!」
「そうですか?」

あまりにあっさりと即答してきたので、私は思わず言葉に詰まってしまった。

「なんだかんだ言って、私もミクもマスターのことを愛してるんですよ?
だったら、ミクにもこういうことを教えないといけないじゃないですか」

メイコのまっすぐな視線に圧されて、私は言葉を紡ぎだせない。

「あ…あぅ…」

口をまごまごとさせていると、メイコはさらに畳み掛けてきた。

「マスターは変なところで真面目すぎるんです。
…だから、初めての時の想いを思い出さしてあげますね」

いつの間にかメイコは縄をほどいて、私にズイッと迫ってくる。

「…ちょ、ちょっと!メイコ!?待ちなさい!まだ心の準備が…」










「久しぶりにマスターと一緒に天国にいけてよかったです…」

いつもより肌をつやつやとさせてメイコは私と抱き合う形になっている。
…無論、二人とも生まれたままの姿で。

「……………」
「マスター、まだ怒ってます?」

メイコが上目使いで見つめてきた姿が可愛らしくて、私はただ笑っていた。

「別に…、メイコの言ってることも間違っていないしね。
でも、私はこういうことをするためにメイコやミクのマスターになったわけじゃないんだけどね…」

私のため息にメイコはクスリと微笑んでくれる。

「もちろんそれはわかっています。でも、マスター。好きになってしまったから仕方ないです。マスターと愛を育みたいんです」

気づけば私はふんわりと微笑んでいた。

「そうね、私はいずれはミクが私に望むことができればいいと思っているわ」

そして、私とメイコは見つめ合い、急におかしさがこみあげてきて思いきり笑いあっていた。

「それじゃ、マスター。ミクにいろいろと教えていいんですね?」

私は少し考えてから、出した結論をメイコに向かって告げていた。

「そうね…、あの本より変なことを教えたら、今度こそ海に沈めるからね」

この言葉にメイコは思わず苦笑いをして、了解のポーズをとる。

「わかりました、肝に命じておきます。愛しのマスター」






途中省略している内容が内容なので15歳未満の閲覧はご遠慮願います。

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Author:ねむひ
百合スキーな社会人やってます。


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