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空と星と私達

本格的移転開始 1/30 小ネタ(VOCALOID・extra)

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キツネビトにまつわるとても優しいお話(6/6)

そして三日後、付きっ切りの看病の甲斐もあって、ミクは自力で家に帰れるくらいには回復していた。幸い骨などに異常はなく、しばらくしたら元通りに走れ回るようにはなるだろう。
とはいえ、怪我をした女の子一人、森の中に放るわけにもいかないのでルカもまた集落の手前までついていくことにする。
キツネビトとの確執の手前、集落まで送り届けるには無理があるのだ。
おそらく集落では大騒ぎになっているかもしれない。混乱の中では誤解を与えてしまうだろう。
お礼に自分の集落まで連れて行きたいというミクの強い主張にそう説得して、最後までぐずるミクになんとか納得してもらうまでが大変だった。
そんなこんなで今はルカとミクの二人でキツネビトの集落までミクを送り届けるために向かっている。
思えばこの三日間、短いながらいろいろあった。
見るものすべてが目新しいのか、ミクは絶え間なく好奇心で目を輝かせていたり、ルカの手料理に舌鼓を打っていたり、さすがにお風呂に入れるわけにはいかないので身体を拭こうとすれば、恥ずかしいのか嫌がってなかなか肌を晒さずにいたりと。
とにかく充実していたのか、気が付けば三日と時間が過ぎるのを忘れていた。

「ルカさんこっち」

ミクに手を引かれながらルカは薄暗い森の中を歩んでいる。思った以上の軽快な歩みにまずは一安心といったところか。
今では普通に笑ってくれるが、始めは警戒心から殺気を纏わせていたことを考えると大した変化だとルカはクスクスと微笑む。
そんなルカを不思議に思ったのか、ミクはルカの顔を覗き込んできた。ぱちくりと瞬くミクの澄んだ瞳にルカは思わずたじろいでしまう。

「…ルカさん?」
「なんでもないです。なんでもないですから」

そう言ってあくまで何事もなかったように振る舞うルカに、ミクはなんだか不満そうだ。抗議のつもりか、分かりやすく頬を膨らまして睨み付けている。

「いいもん。ルカさんのことなんて知らないから!」

こうやってルカのことを名前で呼んでくれることがとてもこそばゆい。ルカにとって少しずつ築いていった信頼が実感できていることに充実感を覚えている。
そんな風に思いつつ、そっぽを向きながら不機嫌が治らないミクを宥めていく。
小さな諍いと仲直りの繰り返し。楽しい時間はあっという間に過ぎていき、気が付けば森を抜け開けた場所に出てきていた。
森の中だというのに穏やかな日差しが差し込み、静かな空気が幻想的な雰囲気を思わせる。
まばらに見える家々がそれに拍車をかけているみたいだ。
と、ここでルカは足を止める。これ以上はこの地に踏み込むわけにはいかない。ここでミクとはお別れなのだ。

「…ルカさん」

そのことにミクも気づいたらしく、名残惜しそうにルカを見つめてくる。目に涙を浮かべている姿がとても印象的だ。

「ごめんなさい。何度も言いましたけど、私はここまでなんです」

過去の贖罪なのか、それとも前に進むことへの恐怖なのか、はたまたその両方なのか。ルカは棒立ちのまま一歩も進むことができない。

「このままルカさんとお別れなの?」

ミクの言葉と視線がルカに突き刺さる。頭では分かっている。ミクとルカの間では何の関係もないことも。ただ、ほんの一握りの勇気も持てないだけだ。
ミクとルカの距離はほんの一歩分。手を伸ばせば届く距離だ。しかし、近いようで遠い一歩が大きな壁としてルカの前に立ちふさがる。

「ルカさんっ!」

ミクの叫び声に驚いて、ルカは思わずミクを見やる。大粒の涙をこぼして、ミクはルカのことを睨み付けていた。
ミクの本気の怒り顔にルカはハッと気づかされる。たった一歩。その一歩が歩み出せないことが彼女を傷つけていたことを。
そうすればあとは簡単だった。一歩を踏み出して、ミクへ手を伸ばしそっと抱きしめる。最初から壁なんてなかった。勝手に自分に言い訳をして、勝手に自分たちで壁を作っていただけだ。
しばしの沈黙の後、どこからともなくミクとルカの嗚咽交じりの泣き声が辺りに響き渡っていた。

「ごめんね、ミクちゃん」
「ううん、それよりもさっきの答えを聞かせて?」

お互いに心にたまったもやもやを吐き出すだけ吐き出したところで、ミクが改めて問いかけてくる。
少し意地悪な質問だとは思ったが、ルカが用意していた答えは一つだ。

「もちろん、また会えますよ」

迷いはまだ残っている。それでも意志の強いルカの笑顔はミクに笑顔をもたらすのに十分な理由だった。

「うん、絶対にルカさんに会いに行くからね!」

涙混じりの笑顔にルカは再びミクを抱きしめる。ほんのりと胸に灯された温もりがもたらす心音はとても心地よく、離れるのが惜しいくらいだ。
とはいえ、これ以上はミクの家族も心配してしまうだろう。ミクの元気な姿を見せてあげたい。
最後にミクに諭して、ルカはミクを見送ることにする。

「ルカさんまたね!絶対、絶対遊びに行くからね!」
「はい、楽しみにしてますね」

何度も何度も手を振りながら帰っていくミクを見送って、ルカはその場を後にする。
一歩踏み出せた。その事実は縛られていた過去の自分との決別を意味していた。それと同時にミクと真正面から向き合えるということだ。
安堵の表情を浮かべてルカは振り返る。その場にミクの姿はもうなかった。無事に家にたどり着いたのだろうか。
ミクの姿は見えないというのに、不思議と淋しさは感じられない。
『また会える』
自分で言った言葉がルカ自身に活力を与えていく。自分自身、ミクに会いに行くための足がある。
どこか吹っ切れたのか、ルカの澄みきった笑顔はなんだか頼もしく思える。
次に会えることを楽しみに思いながら、ルカは力強い足取りで帰路についていた。



ミクとルカが出会い、そしてそれがきっかけとなってキツネビトとの関係が修復されて、再び彼らが世の中と交流をもっていくことになるのはそう遠くない話である。







初めてのモジュールをモデルにしたお話になります。
サイレンスさんの相手は誰だろう?と考えて、お祓い的な意味でラセツトムクロだろうと書き始めたのですが、最初から横道にそれているという…。
あと、欝な展開で書いてみたかったのですが、自分にはこれが限界みたいです。
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12/09/28UPしました

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