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空と星と私達

本格的移転開始 1/30 小ネタ(VOCALOID・extra)

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キツネビトにまつわるとても優しいお話(3/6)

うっすらと瞳を開けた先は淡く優しい光に包まれていた。
時間的にはそれほど時間はたっていないはずだ。もしかして夢だったのだろうか。

「…っ!?」

しかし、目を覚ました突如に襲い来る痛みが夢ではないと告げている。
ゆっくりと起き上がればそこはベッドの上だった。着ている服もいつも着ている和服ではなく、白く簡素な病院着のようなものだ。
痛みが気になり、被せられていたシーツを剥いでみると丁寧に包帯を巻かれて手当てをされていた。
ここはどこなのだろう。誰かに助けられたのだろうか。
疑問は次々と湧いてくるが、今はじっとしている方が良さそうだ。ミクはもう一度ベッドに寝転んで、事の成り行きを見守ることにする。

…ガチャ。

その時、不意に扉が開く音がして、ミクは思わずそちらの方に目を向ける。
姿を現したのは修道服に身を包んだ女性であった。桃色の長い髪が印象的で、自分達とはかけ離れた奇抜な服装が外の世界の人間だと示している。
ミクはその姿に見覚えがあった。百年前の惨劇、キツネビトを迫害した連中である。小さいころ嫌というほど聞かされ、子供たちの間で度胸試しとして見に行っていたということもありよく覚えている。
すでに過激派と呼ばれた連中は姿を消していたが、それでも祖先を迫害していたという事実はミクの中で恐怖として植えつけられていた。

「気が付いたんですね」

柔和な笑みを浮かべて、彼女は静かに扉を閉める。閉じ込められたと勘違いして、ミクは慌てて起き上がると壁を背に思い切り睨み付けて威嚇していた。
一方で警戒されてしまっているルカは困ったように眉をひそめてしまう。目の前の彼女―ミクの怯え方は異常だ。
ミクの姿には見覚えがある。昔、過激派と呼ばれていた連中が迫害していたされるキツネビト。彼らに危害が及ばないようにこうして派遣されてきたわけだが、こうして顔を合わせるのは初めてのことだ。
百年近くたった今でも彼らに深く刻まれた傷は癒えてないのであろうか。
もっとも、あの事件から身を隠すためにさらに森の奥深くに潜り込んだのだから無理もない話であるが。
とにかく、今の現状はいい状態とは言えない。
錯乱しているかのようにミクの瞳は焦点が合ってなく、まるで獣を彷彿させるような唸り声を上げている。
ただでさえ怪我をしている身にこれ以上の負担は望ましくない。どうにかして落ち着かせようとルカはミクに手を伸ばす。

「…ひっ!?」

しかしそれがいけなかった。伸ばした手がミク自身を捕まえるものと勘違いさせて、さらに怯えさせてしまう。
短い悲鳴を上げてなんとか逃れようとするが、この狭い部屋だ。いずれ捕まってしまうかもしれない。
こわい、コワイ、怖い。
もはやミクの精神は正常といえる状態ではなかった。ぐるぐると、ぐちゃぐちゃとした嫌な感覚がミクを支配する。目に映るものすべてが敵であるという錯覚。そう感じていた次の瞬間にはルカの腕に思い切り噛みついていた。

「つっ!?」

痛みに顔を歪ませ、ルカは噛まれた腕とミクを見る。ミクは恐怖から逃れるように瞳に涙を浮かべて力一杯噛みついていた。さながら獣のように服の上からなどお構いなしにぎりぎりと噛み続けている。
痛々しいほどの必死な姿にルカは自分たちのやってきたことに疑問を感じていた。交流を閉ざされてしまったとはいえ、自分たちはただ彼らを見守ってきていただけだ。
彼らを知ることもなく、歩み寄ることもせず、時間だけが過ぎて何もしていない。
謝罪と贖罪はした。だがそれだけだ。相手を傷つけることを恐れて相手との関係の修復を怠った結果が今の状態を示している。
腕の痛みより、今のミクの表情を見ることがルカにとって一番辛かった。

「ごめんね。もう大丈夫だから」

そう言うとルカはミクをそっと抱きしめる。とにかく目の前の少女を守ることだけを考えて、ルカは痛みのことなど忘れてしまうほどであった。
そして、突然抱きしめられたことに驚いて、ミクは思わず噛みついていた腕への力を緩めてしまう。おそるおそる見上げれば、そこには痛みなど感じさせない力強い表情をしたルカの顔がある。
この時になってようやくミクは自分のしでかしたことに気が付いた。
正気に戻ってきた途端、激しい罪悪感が押し寄せてくる。後悔と自責の念でカタカタと身体が震え上がってしまっていた。

「よかった。もう大丈夫ですね」

しかし、ルカはそんなミクを責めようともせず、穏やかな慈愛の笑みを浮かべている。
ふとミクが顔を上げると、ルカと視線がぶつかり合っていた。あれだけのことをしたのにルカの瞳に憎悪の色はなく、ただ微笑みかけているだけだ。
なんでこの人はあれだけのことをしたのに優しくしてくれるんだろう。どうして痛い思いをしているはずなのにそれを見せずに笑いかけてくれるのだろう。
ミクの中で戸惑い、憂い、悲しみと様々な感情がぐるぐると渦巻いて今にも胸が張り裂けてしまいそうだ。

「ごめんなさい、…ごめんなさい」

うまく言葉も浮かばずに、ミクはただひたすらに謝っている。
言葉で済む問題じゃない。そんなことは分かっていたけれど、それでもこんな言葉しか出てこなかった。
もちろんそれで自分の気持ちが収まるはずもなく、断罪を求めてルカを見やる。涙も枯れてしまったのか、瞳は赤く腫れ、見ている方が痛々しく感じてしまうほどである。

「いいんですよ。貴女が無事なのですから」

しかし、ミクを迎えたのは断罪ではなく、温かい抱擁であった。
自分で自分を責めて押し潰されてしまいそうなミクではあったが、触れる肌の温もりが不思議と荒んだ心を落ち着かせていく。
静まり返った部屋の中で、ミクはルカに顔を押し付けながら咽び泣いていた。
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