FC2ブログ

空と星と私達

本格的移転開始 1/30 小ネタ(VOCALOID・extra)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

バレンタインにまごころを(4/4)

ついに迎えた二月十四日、ミクはチョコレートを取りに冷蔵庫へと向かう。
今日という日を心待ちに胸を躍らせながら冷蔵庫の扉を開ける。自分のをすぐさま取り出して、中を覘いてみれば見知らぬ包みが三つほど。

「…誰のだろ?」

当然ながら誰のものかはある程度想像はついている。気になったのはただの野次馬根性名だけだ。
思わず手に取ってしげしげと眺めていると、後ろから声を投げかける人物が一人。

「あー、ミク姉!人のチョコ取らないでよね!」

後ろから声をかけてきた人物―リンは、素早くミクに割り込んで手に取っていたチョコレートを奪い取る。
どうやらミクはリンのチョコレートを手に取っていたらしい。
後ろを振り返れば、怒ったように頬を膨らませたリンがいる。不機嫌なのは仕方ないのだろう。

「リンちゃん、ごめん」
「別に謝らなくてもいいってば」

ミクが若干身を引いたのを気にしたのか、リンは乾いた笑みを浮かべていた。
ルカが生まれる前の出来事があってからもリンは相変わらずのように接してきてくれる。完全にリセットとはいかないけれど、リンは吹っ切れたようで適度な距離を保ってくれていた。
リンのことが気になっていただけに、態度で示す「気にするな」というメッセージはミクにとってはとてもありがたい。

「リンちゃんも誰かにチョコ上げるんだ?」
「まあねー」
「もしかして、わたし?」
「うわ、人のことフッたくせに何寝言言ってるのこの姉は」

冗談交じりの会話に笑いながら、ミクはじっとリンを見つめる。どこか遠くを見るような優しい瞳は想い人のことでも考えているのだろうか。
どこか安心感を与える笑顔に、ミクはクスッと微笑む。

「私の作ったチョコが食べたいって言ったから仕方なくだって」
「その割には楽しそうだね」
「そんなことよりミク姉はどうなのさ?」

リンは赤い顔をごまかすように強引に話題を変えて、ミクをじっと睨み付けていた。
これほどまでに慌ただしいリンも珍しく、おそらく初めてかもしれない。それだけ充実した日々を送っていることに、ミクは安らぎを覚える。
妹が離れていくことにほんのりと嫉妬に似た寂しさも混じっているけれど。

「うん、大丈夫だよ」
「えー、なんかつまんない」
「…リンちゃんちょっとひどくない?」
「そんなことないよ?」

なんだかんだで二人は顔を見合わせながら笑い声をあげていた。おそらく二人ともこれから起こる出来事に胸を高鳴らせている。
不安がないというわけではない。ただ、笑って心を落ち着かせたいだけだ。

「それじゃ行ってくるね」
「うん、頑張ってね。リンちゃん」
「ありがと。ミク姉こそ頑張りなよ。フラれたって慰めてあげないからね!」
「リンちゃん!」
「じゃあねえ!」

ミクが声を上げるよりも早く、リンは部屋を飛び出していく。あっという間の展開に、行き場のなくした怒りを霧散させるようにミクはため息を吐いていた。
もちろん本気で怒っているわけではない。感謝してもしきれないくらいだ。
改めてミクは自分の手に取っている包みを軽く握りしめる。
ルカに対する自分の気持ち。それがどれだけ自分の想いを伝えられるかわからないけれど、ルカが喜んでくれたらそれでいいと思う。
とりあえず大きく息を吸い込んで、振り返ればそこに見知った顔が一つ。

「…ルカちゃん!?」

気配を感じさせなかったこと、唐突にルカが現れたことにミクは驚いて飛び上がっていた。
驚きのあまり背筋が伸びきってしまっているのだが、ルカがそのことに気づいている様子は見られない。
不思議そうにミクを見つめ、そのことがミクの心拍数を上げていく。

「楽しそうですね?」
「み、見てたの?」
「はい、リンさんとすごく楽しそうでしたね」

おそるおそる問いかけるミクに、無情にもルカは首を縦に振る。おそらく初めから見られていた。その事実はさらにミクの鼓動を早めるには十分すぎる出来事だ。
そんなミクを他所に、ルカは冷蔵庫の扉を開けると小さなラッピングを取り出していた。
残されていた二つのラッピングの一つに、ミクは目を丸くする。
てっきりメイコの作ったものとばかり思っていたから意外といえば意外だった。
少なくともチョコレートを作っていたそぶりを見せていなかっただけに、淡い期待がミクを支配する。

「ルカちゃん、もしかしてそれって…」
「はい、ミクさんから話を聞いてましたので。せっかくなので作ってみました」

口調は相変わらず抑揚が感じられないが、そんなことはどうでもよかった。
急に胸が締め付けられて、そこから一気に弾けて心が解放されるような感覚は非常に心地よい。
ミクの心はすでにここに有らずといったようで、頬が緩みっぱなしだ。
そんなミクのころころ変わる表情が不思議に思えるのか、ルカは首を傾げている。

「…ミクさん?」
「あっ、ごめんねルカちゃん」

自分でも笑いをこらえているのを自覚しながら、ミクは自分の持っていたチョコレートを差し出していた。

「ありがとルカちゃん、早速だけど開けてもいい?」
「ええ、どうぞ」
「やった!」

ルカに促されるまま、ミクは丁寧にラッピングを外して中身を取り出していく。
シンプルな包装の中から出てきたのは、見た目はとてもきれいで、初めて作ったとは思えない出来のものであった。
自分で作った少々いびつなチョコレートを思い出して、嫉妬にも似た感情がミクの胸の内を過ぎていく。
羨ましそうな視線を送りながらも、ミクはチョコレートを口の中に放り込んでいた。

「…ん?」

口の中で広がる違和感に、ミクは思わず顔をしかめてしまう。
見た目は甘そうではあったが、思い描いていた味わいとは違ったギャップに目を白黒とさせていた。

「…どうかしましたか?」
「あのねルカちゃん、言いにくいんだけどちょっと苦いの」
「え…?」

これまで無表情といったルカの様子にわずかに陰りが見える。いつもクールに見えるルカが動揺しているのはめずらしい。
なんとなくではあったが、ルカの変化が面白くてミクは少しだけつついてみる。

「ねえルカちゃん。どんなふうにチョコを作ったの?」
「その…、チョコを溶かして固めてみたんですけど」
「もしかして直火で?」

言葉を失い、固まってしまったあたり図星なのだろう。見た目はきれいに仕上がっているのだから、今回は知識の不足が原因だという考えがミクのうっすらとした意識を通り過ぎていく。
だが、今ミクの感情を支配しているのはもっと別のことだ。
―ルカの中に自分が存在している。
その事実だけで胸が張り裂けそうになる。だから次に言葉を紡ごうとしていた時には、ミクは満面の笑みを浮かべていた。

「大丈夫だよルカちゃん。すっごく美味しい」

慰めでもなんでもなく自然と出てきた言葉がルカの心をほんのりと温める。ルカ自身は気付いていないのか目を白黒とさせていた。
そんなルカが可愛くてたまらなくて、ミクはじっとルカに見入っている。まじまじと送るその視線に、ルカもまんざらではない様子だ。

「そうだ、ルカちゃんにまだチョコ渡してなかったよね。受け取ってもらえるかな?」

すっかり渡しそびれていたチョコレートを取り出して、ミクはおずおずと差し出していく。
そんなミクに微笑みを返してチョコレートを受け取ると、ルカはほんのわずかにだけれど唇を釣り上げていた。
今まで見たことのなかったルカの笑顔は引き込まれてしまいそうなくらい魅力的でミクの頬の温度が上昇していく。

「ルカちゃん、笑った…」
「…え?」
「ルカちゃんの笑顔すごくかわいい」

恍惚の表情を浮かべて、ミクはルカの頬に手を伸ばしていた。間近から覗き込まれるミクの視線から目が離せなく、ルカは動揺している自分に戸惑っている。
いつの間にやら唇が重なってしまいそうな距離にいることに気が付いて、ミクとルカは慌てて距離を取っていた。

「ご、ごめんねルカちゃん?」
「いえ、大丈夫です」
「……………」

不意に訪れた不思議な沈黙は二人にお互いのことを意識させてしまう。どちらから話しかけようかときっかけを見つけ出そうとすることすら楽しい。
もっとお話をしたい。もっと触れ合いたい。そんな想いが二人を支配する。

「あの、ミクさん。チョコレートをいただいてもいいですか?ミクさんのレシピとか教えてほしいです」
「うん!わたしのでよかったらいつでもいいよ!」

何よりもルカのほうから歩み寄ってくれたことが嬉しくて、ミクは何度も頷いていた。
ルカの笑顔がもっと見たくてミクは身振り手振りを大きくしてルカに話しかけていく。
ルカの心は芽生えたばかりで、相変わらず感情をうまく表現できない。しかし、そんなミクと話すのが楽しいのか、ルカは終始頬を緩めているばかりだ。まだまだそんな風に自覚しているわけではないのだけれど。
とはいえ、お互いのチョコレートの話題を延々と繰り出している二人の距離は着実に縮まっていく。そんな楽しそうにしている二人の姿は実に幸せそうな雰囲気を醸し出していた。
スポンサーサイト

Comment

[19]

12/05/28UPしました

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

Trackback

http://mistyemotion.blog102.fc2.com/tb.php/95-28340443

 | HOME | 

プロフィール

ねむひ

Author:ねむひ
百合スキーな社会人やってます。


最新記事


最新コメント


最新トラックバック


月別アーカイブ


お品書き

二次系文章 (77)
正しい勉強の仕方?(QMA・ユリマラ) (6)
魔法学園へようこそ!(QMA・ギャグ) (4)
ルキアサンタがやってくる(QMA・ルキマラ) (8)
まらりやせいちょうにっし(QMA・シャロマラ) (4)
星に願いを(QMA・ユリマラ) (2)
星に願いを ふたつめ(QMA・ユリマラ) (3)
星に願いを みっつめ(QMA・ユリマラ) (3)
高村姉妹の休日(スズナリ) (5)
歌えない歌姫と不思議な感情(ボーカロイド・ミク、マスター、メイコ) (8)
恋する歌姫とネギ色リップ(ボーカロイド・ネギトロ) (5)
愛しき歌姫に捧げるコイノウタ(ボーカロイド・ネギトロ) (8)
恋しき歌姫に送るあいのうた(ボーカロイド・メイマス)※R-15閲覧注意 (6)
生まれた日に刻む幸せの鼓動(ボーカロイド・extra、ネギトロ) (5)
バレンタインにまごころを(ボーカロイド・extra、ネギトロ) (4)
キツネビトにまつわるとても優しいお話(ボーカロイド・extra、ネギトロ) (6)
創作系文章 (8)
森と月と不思議な人達 (8)
捧げ文 (10)
VOCALOIDとお留守番(ボーカロイド・メイコ、ミク、マスター) (4)
VOCALOIDと思い出話(ボーカロイド・メイマス) (6)
小ネタ(VOCALOIDとマスターさん) (8)
小ネタ(VOCALOID・extra) (10)
小ネタ(QMA) (0)
小ネタ(NOIR) (0)
小ネタ(その他) (0)
頂き物 (3)
お知らせ (3)

検索フォーム


RSSリンクの表示


リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる


QRコード

QR

来訪者数


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。