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空と星と私達

本格的移転開始 1/30 小ネタ(VOCALOID・extra)

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バレンタインにまごころを(3/4)

時は流れて二月の初め。ルカが稼働してまだ月日は余りたっていない。一応、常識とかはあらかじめ入っているものの、それでも知っているのと経験するのでは大きな違いだ。
見るもの聞くもの触れるものすべてに、自分の生まれた世界に感動している日々を送っている。
中でも、いきなりミクに告白されたのは新鮮そのものだった。
生まれたばかりの自分に向けられた感情。そこから生まれたほんのりと温かい感情。
巡音ルカにはまだ自我といった感情は発達していない。だからこそミクの好意をすんなりと受け入れることができたのだろう。
このことがルカにどのように影響するかはまだ分からない。けれども、ルカにとってそれは決して悪くなかったといえるかもしれない。

「………?」

廊下を歩けば不意に何か物音がして、ルカはぴたりと足を止める。どこからかと耳を澄ませばこの先にある調理室のほうだ。
不思議に思って調理室を覗き込むと、中ではミクがただ一人一所懸命に作業に没頭している。
何やら小難しい表情をしているが、瞳は生気で満ち溢れていた。

「ミクさん、とても楽しそうですね?」
「にゃわぁぁっ!?」

とてもVOCALOIDとは思えない叫び声を上げて、ミクは背筋をまっすぐに伸ばして身体を震わせる。
何か悪い事でもしたのだろうか。きょとんとしながらルカはミクをじっと見つめる。
理由は分からないが、ミクは荒い息を吐きながらボールを抱えていた。手を滑らせてしまったのだろうか。
自分が声をかけたことで邪魔をしてしまったのなら、それは悪いことなのかもしれない。

「あの、すいません。なんだか邪魔をしてしまったようですね。失礼しました」
「待って!違うの!ルカちゃんのせいじゃなくて、その、とにかく待って!」

部屋を出ていこうとしたところを呼び止められて、ルカはドアのノブに手をかけていたのをぴたりと止める。
なぜだろう、単純に迷惑でないと言われたことが嬉しい。
振り返れば、ミクは後ろにある調理道具一式を隠すように立っていた。いまいちミクの行動がよくわからなく、ルカは首を傾げてしまう。

「それでミクさん、大丈夫ですか?」
「あ、うん。…ってそうじゃなくて、悪いのはルカちゃんじゃないの。ずっと内緒にしてたわたしなの」
「内緒って何がです?」
「ほら、もうすぐバレンタインでしょ?せっかくチョコレート作ってたんだけど、ルカちゃんを驚かせたくて…」
「バレンタイン?」

話の流れから大体のことは予想が付きそうではあるが、ルカはきょとんと瞳を瞬かせたままだ。
ひょっとしてという思いがミクの脳裏に過ぎる。

「もしかして、ルカちゃんバレンタインのこと知らないの?」
「はい、バレンタインとか何なのですか?」

大真面目に言っているあたり、ルカは本気なのだろう。
いくら何をしているか気づかれていないとはいえ、大慌てで隠したのはさすがに恥ずかしいものはある。
そして、それが気になったのかまじまじと見つめてくるルカの好奇の視線は非常に耐えがたい。
おそらく、ミクが説明してくれるのを待っているのだろう。ルカはずっとそこに佇んだまま一歩も動こうとしない。
こうなれば話すほか仕方なく、ミクは諦めたようにため息を吐いていた。

「あのねルカちゃん、バレンタインというのは好きな人とかお世話になっている人にチョコレートを上げたりする日なんだよ」
「そうですか。それで…」
「いや、まあ、うん。ルカちゃんにチョコレートを上げるために作ってたんだけど」

やはり一から説明するのは照れ臭いのか、ミクの頬はほんのりと赤い。
もちろん、今言った言葉は聞きかじり程度のうろ覚えでバレンタインの在り方など知る由もない。
それでも自分の気持ちは知ってもらいたかったし、どさくさに紛れて告白に似た何かを伝えられたことに笑みをこぼす。

「ありがとうございます。それでミクさん、どうしてバレンタインにチョコレートを贈るのでしょうか?」
「…へ?」

多分、今自分の顔を鏡で見てみたら相当に間の抜けた顔をしているであろうことをミクは自覚する。
唐突にルカの口から出てきた意外な言葉にミクは頭を悩ませていた。
バレンタインといっても、製菓会社の陰謀といわれていたり、国によって文化が違ったりと様々だ。
当然ながらミクにそのことが上手く説明できる由もなく、代わりにどうしてルカがこんなことを聞いてきたのだろうと考え方を切り替える。

「あの…、ルカちゃん?急にそんなことを聞いてきたりしてどうしたの?」
「どうしたのって、チョコレートのことですか?」
「うん」
「…その、チョコレートとか贈る由来を知らないと、ミクさんにチョコレートを送れないじゃないですか」

予想の斜め上とは時間を止めてしまうものらしい。丸い目がさらに丸くなったのを自覚して、ミクの中でルカの言葉が反芻していく。
脳内にじんわりと染み渡っていくのが分かるくらい、ミクは感情の昂りをはっきりと意識していた。

「ルカちゃんそれって…」
「はい、ミクさんにはとてもお世話になっていますから」
「…そうだよね」

あくまで冷静に話すルカに、ミクは思わず項垂れてしまう。期待込めた自分が少しばかり馬鹿らしかったが、少しくらいは近づけたのかと自分に言い聞かせる。
一方で、ルカはそんなミクに戸惑いを覚えていた。
なぜミクががっかりしているのかは分からない。けれど、ミクが項垂れているのを見るとなんだか胸のあたりがじわじわと苦しくなっていくのを自覚する。
先ほどは「お世話になっている」という理由がすんなりと出てきたが、これにもルカは驚いていた。
どうしてミクにチョコレートを贈ろうと思ったのだろう。
確かにミクには世話になっている。だからといってこれほどまでに自発的にならなくてもいいのではないか。

「まあいいや。ルカちゃん、チョコレート楽しみにしているからね」
「…はい」

そんなルカの内情などつゆ知らず、ミクはそう言い残して作業に戻っていく。
すぐに作業に没頭しているあまり、まるでさっきのやり取りのことなど忘れてしまったようだ。
ただ、一所懸命なミクの姿はほんの少し前まで悩んでいたことを吹き飛ばしてしまう。
わずかながらに唇の片端を釣り上げて、ルカはその場に釘づけにされるようにミクをじっと見守っていた。
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